レクイエム

わずか10分で見る気をなくす。

密入国を図った集団の中に少女がいる。女性の入国管理官が哀れに思って、規則違反を承知の上で少女を自宅に連れて帰る。わずか10分で見る気をなくしたシーンだ。

少女を連れ帰るのは別にかまわないのだが、連れ帰っても納得できるストーリーを用意してもらいたい。そもそも入国管理官として、常日頃から密入国者に接する職業なのだから、哀れな少女を目にするのも珍しくはないだろう。それを今回に限ってはあえて連れ帰るというのなら、よほどの理由が必要だ。

連れ帰れるほどに健康状態も良好であるなら連れ帰る必要はないし、悲惨な状態なら入院などの措置を取るべきであって、自宅に連れ帰るとはもってのほか。常識で判断すればするほど、理由は見当たらないのに、セリフで説明しただけであっさりと連れて帰ってしまう。

これでは、「ああ、入国管理官に連れて帰らせたかったのね」と、筋書きを考えた人間の思惑しか見えてこない。先の展開で「少女を捜す悪者の集団が街中で傍若無人に暴れる」シーンを用意しているのだから、いっそ冒頭で入国管理官を襲わせればいいものを。それならば、少女を伴って行動するのに、役者の口先で説明する必要もなくなる。

追記

女性は入国管理官ではなく、ソーシャル・ワーカーなのだそうな。しかしながら、職業がなんであろうと、少女を連れ帰っても納得できる理由が必要なのは変わらない。