アンダー・サスピション

アンダー・サスピション [DVD]ミステリーとサスペンスの区別がついていない。

てっきりミステリーだと思っていれば、実はサスペンスだった。終わりのほうまでは見応えのある作品なのだが、ラストで混乱してしまう。結局、真犯人は顔写真すら出てこない。ミステリーでないのならそれもかまわないのだが、ミステリー仕立てで話を進めておきながら、あまりな仕打ち。

どうやら主人公は、プライバシーを守ろうとして証言を翻すうちに疑惑が高まり、ついには妻からも犯人として疑われてしまったことを苦に、自暴自棄となったようだ。しかし、だからといって、手を染めてもいない卑劣な犯罪を自白するだろうか。専門は税務とはいえ、有力者の弁護士が。

主人公が隠そうとしたプライバシーは、妻との冷めた夫婦関係が発端となっている。冷めた理由は妻が異常に嫉妬深いからなのだが、この設定がどうも浮いている。セリフで「嫉妬深い」と語るだけでなく、シーンとして見せてもいるのだが、主人公と妻の姪とのシチュエーションは誤解されてもおかしくはないもので、それだけで嫉妬深いとは言えない。

ありきたりかもしれないが、感じの悪い刑事を真犯人とすれば、それなりにまとまっただろう。あるいは署長を真犯人として、弁護士でもある主人公が逆襲する形にすれば、痛快に仕上がったかもしれない。もしくは、主人公を破滅に追い込んだ署長が、ラストシーンで真犯人として次の犯行に及ぶというのも、衝撃的でいいかもしれない。

いずれにせよ、ミステリー仕立てである以上は、ミステリーとしてもフィニッシュすべき。最後の最後に犯人はどうでもいいとなったのでは、肩すかしもいいところ。