ナショナル・トレジャー

子供には見せられない、子供向け映画。

さすがはディズニーといったところか。よくもまあ、こうも見事に毒気を抜いたものだと感心する。その結果、かえってえげつない展開となってしまうのだが、それを意図して制作したのだとしたら、たいしたものだ。……とてもそうは思えないが。

主人公が「独立宣言書」を盗むにしてもそれなりに正当な理由が、ディズニーとしては必要だったのだろうか。悪人に盗まれないために盗むという、持って回った筋書きになっている。どのみち盗み出すわけだし、そこが一番の見せ場だったりするのだから、主人公は悪意を持った犯罪者でいいだろうに。のちに改心させれば、教育的見地からも好ましい展開となるはず。

しかしそうはせずに、善意の主人公が罪を犯すものだから、結果として独善的というか偽善的な映画になっている。主人公に悪意はないので心を改めることはしないし、直接は「独立宣言書」を盗んでいない悪人にすべての罪を着せて、めでたしめでたしとなっている。

「救われないストーリーの童話」として制作したのだとしたら、実にお見事。そうでないのなら、あまりにお粗末で、とてものことに子供には見せられない。