フォーガットン

フォーガットン [DVD]これはおもしろい。

どう決着させるのか見当もつかずにハラハラしていたら、見事な終わり方だった。ハッピーエンドに見えても、肝心なことはなにも解決していないのだが、その点にこそ本作最大の味わいがある。見終わった後も脳内でストーリーが持続してしまうのだからたまらない。

実験の障害となる者を排除するシーンもよくできている。例えば、科学者がシャーレで微生物を培養して実験しているときに障害物が発生したら、スポイトなどで吸い取って除去することだろう。それと同様のことを微生物の視点で表現しているから、人類が実験動物に過ぎないことがよくわかる。

問題が解決したように見えて実は解決していないというラストシーンはよくあるが、たいていは主人公の知る限りでは解決しており、観客にだけ未解決をほのめかす作りになっている。ところが本作では、根本的な問題はなにも解決していないことを主人公がよくわかっているという終わり方だ。

それでも、主人公が一番望んでいた問題だけは無事に解決されており、人類に覆い被さる重く苦しい問題には目をつぶって、目の前のささやかな幸せをのみ噛みしめるという、刹那的なハッピーエンドになっている。

見終えてすぐに、なにも解決していないのにそれでいいのかと問いたくなる。これこそが監督の狙いであるに違いない。なぜなら、ラストシーンの構図はそっくりそのまま現実の社会に当てはまるからだ。

人類全体に降りかかる戦争や災害など、個人の手には負えない問題に目をつぶって、自分ひとりだけの幸せに満足していて、それでいいのか。監督はそう問うている。

ただの娯楽作品だからと気楽に見ていれば、最後の最後になって重いテーマを突きつけられ、考えさせられる。いや、お見事。