IDクライム

もはや犯罪者。

初めのうちはよくある刑事物だった。ところが、警官である主人公が死体を抱えてその処分を迫られたあたりで俄然おもしろくなった。

正規の手続きを踏まずに死体を隠匿するのだから、もはや犯罪者だ。警官として捜査に当たる主人公と、潜入捜査だったとはいえ、いまも犯罪組織から仲間として扱われる主人公とが、完全に乖離している。

原題は「Identity」だそうだが、邦題よりもしっくりくる。本作は身分詐称事件を扱う刑事物ではなく、警官と犯罪者とに引き裂かれてしまった主人公の自己同一性をテーマにした作品だ。

とはいえ、おもしろくなったと思ったらすぐに終わってしまった。それもよくわからない終わり方だった。