フローズン・リバー

フローズン・リバー [DVD]
犯罪推奨作品。

つまらなかった。

外国人を密入国させた際に、窓から投げ捨てたバッグに乳児が入っていたのはよかった。そうと知ってあわてて取りに戻っても、すでに乳児は冷たくなっていたのだから、ぐっと引き込まれた。ところが、乳児は仮死状態になっていただけで、すぐに蘇生してしまった。せっかくの見せ場なのに、小さくまとまっていて実につまらなかった。

主人公が留守の間に、トレーラーハウスの水道管が凍結した。上の子がバーナーで水道管をあぶってボヤを出すのだが、煙の入った室内で下の子が寝込んでいたのはよかった。てっきり一酸化炭素中毒だと思い、ここから始まるストーリーに期待した。ところが、下の子はただ寝ていただけでなんの被害にも遭わなかった。見せ場にさえならなかったわけで、本当につまらなかった。

最後に主人公は逮捕されるが、犯罪で稼いだ金は没収されなかった。おかげで子供たちに新しいトレーラーハウスを買ってやれたのだが、こんなストーリーで喜べというのだろうか。犯罪を推奨しているとしか思えない。

さらに、逮捕された主人公の代わりに、相棒が子供たちの面倒を見るようだが、これはお粗末。子供かわいさに主人公が口をつぐんだとしても、密輸や密入国のブローカー、あるいは密入国に失敗して強制送還される外国人までもが、口をつぐんでくれるはずはない。相棒は先住民族だったが、逮捕されて当然。

つまり、主人公の子供たちは保護者不在となり、児童福祉施設などに収容されることになる。新しいトレーラーハウスは住む者も管理する者もなく、荒れ果ててゆくだろう。

そう描いてくれたなら、作品として意味を持つ。母親が犯罪者に転落して一家離散する悲劇を見せられ、思うところもあるからだ。

しかし見せてくれたのは、母親は逮捕されたが、犯罪で稼いだ金で新しいトレーラーハウスも届き、罪を免れた相棒が子供たちの保護者となって、老婆をだました上の子が反省しておしまいという、無意味なもの。

この作品には、とんでもないメッセージが込められている。貧しくて金に困ったなら、犯罪に手を染めよう。簡単に大金を稼げて、いい家も手に入る。ばれてもごまかせるし、初犯ならすぐに出所できる。それに、子供の間は口先だけ謝っておけば許してもらえるよ、と。

罪を犯すのはたやすく、簡単に得られる大金は魅力で、そうなるともうやめられない。ということを伝えたかったのかもしれないが、それにしては結末がよろしくない。やはりこれは、犯罪推奨作品にちがいない。

ちなみに、主人公の相棒は目が悪いことになっている。手にした紙幣だとか、メモだとかを確認するために、顔を近づけるシーンがある。おそらくは極度の近視か乱視、あるいはその両方という設定なのだろうが、なぜか裸眼で運転している。凍結して雪まで積もった河の上で車を走らせても、正確にナビゲーションできる。白一色の世界で、よくもまあはっきりと見えるものだ。