コンテイジョン

コンテイジョン Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)
盲信への警鐘。

評価の分かれる作品だろう。だまされなかった者は、肩透かしの作品だったと低く評価するにちがいない。だまされても、だまされた事実に気づかないか、気づいたとしてもその意味がわからなければ、いまいちと評価するはず。

この作品をしっかりと味わえるのは、ころりとだまされた上に、だまされたことがなにを意味するか、気づいた者だけ。

まず、この作品はパニック物ではない。サスペンス物でもない。だから、パニックやサスペンスに期待すると、がっかりする羽目になる。

そして、主役はジュード・ロウだ。

ジュード・ロウはフリーのジャーナリスト役をしている。これをメインに扱ってしまうと観客をだましにくくなるからか、名のある俳優を出演させていろんなエピソードを盛り込み、ジュード・ロウを脇役に追いやっている。

ジュード・ロウは自分がウイルスに感染した際に、特効薬を持ち出して完治してみせる。ところが、これがまったくのうそっぱちで、そもそも感染はしていない。ホメオパシーと呼ばれる民間療法が、さも効果があるかのように振る舞い、大衆を煽動することで大儲けしている。

それは作中で明らかになるのだが、逮捕されたジュード・ロウに淡々と事実を突きつけるシーンこそが、この作品のクライマックス。観客である私が、根拠不明のホメオパシーにすっかりだまされていたことに、気づかされた瞬間だ。

つまりこの作品は、怪しげな治療を盲信することに対して、警鐘を鳴らしている。

映画だから、だまされても笑ってすませることができる。しかし、見世物である映画の中でさえだまされるのなら、現実社会で悩みを抱えたときには、もっとたやすくだまされるだろう。そのことに気づいて、深く考えさせられた。