座頭市

座頭市 <北野武監督作品> [DVD]こりゃ驚いた。

ビートたけしはあまり好きではない。そして邦画も現代劇は好まないため、北野武監督作品はほとんどスルーしてきた。しかしながら「座頭市」を撮ると聞いたときには興味を持った。

座頭市」は勝新でなければといまでも思うが、その勝新の演技が泥臭く感じられて苦手だったので、ちがう「座頭市」を見てみたかったのだ。ところが、やれ金髪だの、やれタップダンスだのと、芳しくない評判を伝え聞くにつれて興味をなくした。奇をてらっただけか、と。

その「金髪座頭市」を見てみた。冷やかし半分でなにも期待せずに。いや、どんな駄作に仕上がったのかと、悪趣味な期待を胸に秘めて、見てみた。


見て、驚いた。
こりゃ、おもしろい。

勝新の演技が苦手だったので、まったくちがう「座頭市」に違和感はなかった。そこにいるのがビートたけしだからか、金髪も、随所にちりばめられたギャグも、気にならなかった。時代劇にしては斬新なカメラワークも見受けられたが、これは昨今はやりの現代風時代劇の流れを踏襲したものか。殺陣にCGを活用したのもリアルでよかった。ややチープなCGだったのは残念だが。

「市」が人を斬りすぎるのはいささか気になった。イカサマを働いたからといって、賭場のヤクザをひとり残らず滅多斬りにするのはどうかと思う。しかしながら、派手な殺陣は興行的にも不可欠なのだろうから、しかたのないところか。

さて、噂のタップダンスだが。これがまた実にいいのだ。タップにはまるで興味がないし、話を聞いただけで拒絶感があった。ところが、実際に見てみれば見事なまでに時代劇にマッチしている。祭りの一環としてタップを披露するわけだが、事前にそれとはわからない伏線をきっちりと張ってあるため、エピローグになって突然祭りが始まってもすんなりと受け入れることができた。で、興味のないタップダンスに思わず引き込まれてしまったわけだ。

世界の「キタノ」として高く評価されているのは知っているが、なるほどと納得した作品だった。