ウィラード

かわいいネズミじゃ怖くない。

ネズミ物は好きだし、おもしろかったのだが、怖さという点ではいまいち。人間慣れした清潔なネズミを撮影に使うのは理解できるが、それがそのまま伝わってくるので残念。つまり、きれいでかわいらしいネズミばかりが登場して、ちっとも怖くないのだ。

ここはひとつリアリティを追求せずに、CGで作った汚らしくもおぞましいネズミを登場させてほしかった。主人公が薄汚れたドブネズミに頬ずりしたならば、怖さも増しただろうに。

また、においに関するシーンがなかったのも残念。画面を見れば、そこここに大量の糞が転がっているのだから、悪臭に辟易するシーンは必須のはず。糞を出しておきながら尿は出さない演出も合点がいかない。

いずれにせよ、ホラーと呼べる要素は主役の表情くらいで、肝心のネズミは怖くない。脚本さえ差し替えれば、そのままファンタジックストーリーに仕上がってもおかしくはない作風だ。