えじき

えじき [DVD]不条理感を楽しめる。

南北戦争、というよりも西部劇でホラーという珍しい作品。じわじわと盛り上げてゆくのもいいが、いささかじわじわすぎるかもしれない。これが敵だと思えるような悪霊も出てこない。しかしながら意表を突いたクライマックスは、なぜそうなるのかという不条理感を楽しめて、悪くはない。

こうですああですと、よけいな謎解きなんぞをする気はいっさいないところを見ると、あれをこそ楽しめということだろう。実際、説明がないからこそ、なぜそうなったのかと脳内で妄想がほとばしった。

窓ガラスに主人公の姿が映るというさりげないシーンがあるのだが、見終わって初めてその意味がわかった。つまり、あのときにはすでに呪われた身になっていたということ。五体満足に見えているのは幻なのだ。悪霊物だと思っていたからついつい対決を期待してしまったが、実は呪い物だったか。

と、ここまで書いて、ふと原題が気になった。確かオープニングロールで妙なタイトルを目にして違和感を覚えたはず。調べてみれば、原題は「DEAD BIRDS」。どこのポータルサイトで翻訳しても、似たような和訳しか返ってこない。

悪霊なら、たかが野鳥を取り殺す必要もないだろう。だが、館や土地そのものが呪われているのであれば、ただの野鳥も毒気に当てられてくたばることだろう。だから原題は「DEAD BIRDS」。そういうことかもしれない。