天正伊賀の乱

天正伊賀の乱 [DVD]とんでもない作品。

序盤で驚くほどチープな殺陣が披露される。ふつうなら時間を惜しんでそこで見捨てるのだが、なにか違う雰囲気が漂っているので見続けると、とんでもない作品だとわかってきた。

忍者物のアクション時代劇なら到底許されない殺陣だが、これは、アクション物ではないのだからアクションには期待するなとのメッセージだった。その証拠に、あえてお粗末な殺陣をさらした後はもう戦わない。戦闘シーンが皆無というわけではないが、ないも同然のストーリーが展開する。

忍者物といえば、凄腕の忍者が獅子奮迅の活躍をするもの。それはそれで悪くはないが、伝え聞く忍者の実像を思えば、もっと地道な、あるいは悲惨な、そんな忍者物も見てみたいとずっと思っていた。

本作はまさにそれ。超人的な活躍は一切しない忍者の物語だ。密書を運ぶ、監視する、護衛する、妨害するといった、地道な任務。そして、だまされ、裏切られ、捨て駒として無駄に死んでゆく。下忍にスポットライトを当てたからにはこうでなくてはと、納得のゆく悲惨な結末。随所で現代を感じ取ってしまう映像は残念だが、お次はさらにもっと平凡な忍者を描いてほしいものだ。

もっとも、次もまた、ひとには勧められない作品となるのだろう。